【例題あり】硝酸の工業的製法オストワルト法をイラストでわかりやすく解説!触媒や化学式も簡単に覚えられます!

【例題あり】硝酸の工業的製法オストワルト法をイラストでわかりやすく解説!触媒や化学式も簡単に覚えられます!

オストワルト法は硝酸の工業的製法になっていますが,少し複雑な化学反応式のためか受験ではとても頻出になっています。

今回はオストワルト法に関するあれこれをすべておさらいしていきたいと思います!

受験頻出のチェックポイントをすべて網羅,ちょっとした豆知識も載せています。

それではさっそく行ってみましょう!

オストワルト法 硝酸製造の化学反応式

概要 硝酸の製法

オストワルト法はアンモニアから硝酸を発生させる工業的製法です。

その全体の反応式は,

「NH3+2O2→HNO3+H2O」

となります。

見た目ではとても簡単な化学反応式ですが,工場の仕組み上3段階の反応にわけて進行していきます。

そのすべてに意味があるので,一つずつ確認していきましょう!

1段階目 アンモニアの酸化

「4NH3+5O2→4NO+6H2O」

まずはアンモニアを酸素を含む空気とともに加熱します。

そして白金(Pt)触媒を利用して酸化器の中で酸化させます。

ここで生じた一酸化窒素NOを次の反応で使っていきます。

ポイントとしては白金触媒を使っていることといれたアンモニアと同量の一酸化窒素が生成されることです。

2段階目 一酸化窒素の酸化

「2NO+O2→2NO2

一酸化窒素は無色透明の気体ですが,2段階目でさらに酸化させると赤褐色気体の二酸化窒素を生成します。

ここで用いるNOは1段階目で生成したものだけでなく,3段階目で副産物として生成する分をリサイクル利用しています。

3段階目 硝酸の発生

「3NO2+H2O→2HNO3+NO」

二酸化窒素を吸収塔という施設にいれて,上から温水を散水すると水に吸収されて硝酸が液体として生成されます。

さらに副産物として生成する一酸化窒素NOは上部から排気され2段階目の反応にリサイクル利用されます。

【図解】工業的な製造過程のイラスト

ここでは熱を最大限利用できるように,酸化器内の熱交換器を通ってまずアンモニアが加熱されます。

次に白金触媒を通過し900度程度に加熱するとほんの一瞬で一酸化窒素になるそうです。

次に生成した一酸化炭素を酸化させ二酸化窒素を生成させます。この反応は自発的に起こります。

吸収塔では上から散水することで二酸化窒素が水に溶け硝酸として下から回収できます。

一酸化炭素は気体なので上から回収してリサイクルしています。

練習問題に挑戦!

問1

アンモニア1.0㎏を原料として,そのすべてを硝酸に変えるものとする。このとき必要な酸素の体積は標準状態で何Lか。また,100%硝酸は何kg生成するか。

※標準状態において1モルの気体の体積は22.4L

※化学の新演習(著:卜部吉庸)より福岡大学入試問題改題

解説は「まとめ」の章に載せてあります。答えを知りたい方は上のボタンからジャンプできます。

オストワルト法が採用された背景

1902年頃ドイツのヴィルヘルム・オストワルトが効率的に硝酸を製造するオストワルト法を考案しました。

ただし当時はまだ主原料のアンモニアを効率的に大量生産する方法が見つかっていませんでした。

1913年頃にハーバー・ボッシュ法が確立されてアンモニアの安定供給が可能になったため,オストワルト法も機能するようになったのです。

【関連記事】

ハーバー・ボッシュ法総まとめ!触媒・反応条件・利点欠点など受験頻出ポイントをわかりやすく解説!

オストワルトは1909年にはノーベル化学賞を受賞しています。

硝酸の実験室的製法

硫酸を用いる反応

「NaNO3+H2SO4→NaHSO4+HNO3

丸底フラスコに硝酸ナトリウムをいれ,加熱しながら濃硫酸を滴下します。

すると揮発性の酸である硝酸が気体として発生するため,これを回収し冷却することで硝酸を得ることができます。

硫酸は不揮発性なので,綺麗に硝酸だけを回収できるのですね。

この反応は強酸と弱酸塩を加熱することで強酸塩と弱酸が生成する「遊離」利用した製法になります。

硝酸の取り扱い注意点

硝酸は熱や光によって容易に分解してしまいます。

従って回収した後放置しておくと収率が減少してしまうため,褐色瓶で保存する必要があります。

また皮膚に付着すると「キサントプロテイン反応」により皮膚が黄色く変色してしまいます。

皮膚にかからないように注意が必要です。

まとめ

NH3+2O2→HNO3+H2O

1段階目「4NH3+5O2→4NO+6H2O
2段階目「2NO+O2→2NO2
3段階目「3NO2+H2O→2HNO3+NO

1段階目の触媒は白金。

3段階目で生成したNOは再生利用する。

練習問題の解説

酸素の体積:2.6×103L
硝酸の質量:3.7kg。

1kg(1000g)のアンモニアは1000/17≒58.8mol
アンモニア1molあたり2molの酸素を使うので,必要な酸素は58.8*2=117.6mol
従ってこれを体積にすると117.6*22.4≒2.6×103L。

アンモニア1molあたり1molの硝酸が生成する。
硝酸の分子量は63であるため,58.8*63≒3.7×103gの硝酸が生成する。
従って生成する100%硝酸の質量は3.7kg。


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