ラッコの知られざる変わった生態を徹底解剖!ラッコにはどこで会えるの?

ラッコの知られざる変わった生態を徹底解剖!ラッコにはどこで会えるの?

2021.5.2更新

海の生き物と一口にいっても「イルカ」「アシカ」「ペンギン」など様々な有名な生き物がいます。

そんななかでもラッコは特に変わった習性や特徴を持っているのです。

「ラッコ」と聞くとみなさんは「かわいい」「海の生き物」「仰向けで浮かんでいる」といったイメージだと思います。

しかし、実はラッコは絶滅の危機に瀕しています。環境変化や人間の活動によって住処を奪われているのです。

ラッコの生態を知って、かわいらしいラッコを絶滅の危機から救いましょう!


執筆:あざらしくん

慶應義塾大学修士課程・薬学専攻・水族館愛好家

学業の傍ら海洋生物の生態を追い求め続けている。
国内水族館58館制覇(2021年5月現在)

かわいらしいラッコの知られざる生態

ラッコってどんな生き物?

Photo by Azao Mart

ラッコは食肉目イタチ科ラッコ属に分類されます。カワウソが分類上最も近縁ではありますが、イタチの仲間のうち海洋へと進出した唯一の種になります。

2021年現在では、全世界的に見てラッコの生息域は分断・散在していますが、1属1種の「ラッコ」として分類されています。

これは、もともとが同じ生息域として暮らしていたラッコが、生息数減少と同時に住む場所が限られてしまったためです。将来的には生息域に合わせて複数種が認定されるかもしれませんね。

成獣では大きさは1.0m~1.5m。体重は30kg~40kgになります。これはイタチの仲間の中では最大になるそうです。

海にすむ唯一のイタチ科ということで、暮らしぶりも他の生き物とは似ても似つかないものになっています。

ラッコの食性

photo credit: nipotan ウニ via photopin (license)

ラッコは基本的に肉食動物です。泳ぎは特別得意なわけではないので、カニ、ウニや貝を好んで食べます。もちろん魚を捕まえて食べることもあります。

ラッコは成長すると自分専用のお気に入りの石を持っていて、貝がらや殻を割って器用に中身を食べます。

石や食べきれなかった餌を脇腹の皮膚のたるみにしまっておくこともできます。

さらに潜るときにはこの石をおもり代わりにして潜ります。

石1つの使い方だけ見ても大変賢い生き物といえますね♪

ラッコの天敵

Photo by Azao Mart

ラッコは食物連鎖の中ではかなり高次に位置しています。基本的にはラッコが捕食者として周辺の生態系では頂点にいるわけです。

一方で力の弱い幼獣はホオジロザメに捕食されてしまうことが多々あります。

ラッコの生息域はシャチなどともかぶるため天敵といえます。シャチなどの大型の肉食生物から逃れるために、昆布やジャイアントケルプの生い茂る見通しの悪いところに生息しています。

シャチやホオジロザメのような体の大きなサメは小回りが利かないので、海藻の隙間を逃げ回って敵をまいてしまうんですね!

ラッコの保温性

ラッコの生息域は北の寒い地域です。しかしラッコも哺乳類なので、一定の高さに体温を保っておく必要があります。

そのために、ラッコがとった生存戦略は「毛」です!

ラッコの毛の密度は1cm2になんと10万本以上!

この高密度な毛の隙間に空気をため込んで、寒い海中でも体温を保っているのです。

この良質な毛皮求めて、人間による乱獲が相次ぎました。その結果現在では絶滅危惧種に登録されるほどまで数を減らしてしまったという悲しい歴史もあるのです。

ラッコの寿命

一般的なラッコの寿命は15~20年といわれています。近縁種のカワウソが約12年なので、体の大きさに比例して寿命はやや長くなっています。

一方で同じく近縁のイタチやオコジョの仲間の寿命は2~4年と短くなっています。

詳しい理由はよくわかっていませんが、成体になってから外敵が少ないといった要因や、食生活などが影響していると推測されます。

ラッコは飼育下ではさらに長生きする傾向にあります。

2020年9月に亡くなったのとじま水族館の「ラスカ」は推定25歳、人間でいえば100歳を超える大往生でした。

ラッコの生態から考えるラッコが好む生息地

2021年現在の世界のラッコ生息地

以上の情報をもとに考察すると、ラッコの生息域は次の要因を満たす地域ということになります。

  • 餌となる魚介類が豊富
  • 身を隠せる昆布やケルプが自生している
  • 比較的寒冷な気候

ほかにも要因はありますが、代表的なものになります。

実際の生息地はアメリカ・カナダの東海岸やロシア西部になっています。

また興味深いことに、現在ではメキシコ中部など生息地が途切れている部分があり、これらの生息地間の移動はないと推測されています。

元々は同じラッコでしたが、生息地の減少に伴い取り残されてしまったのですね。長い時間をかけて2種にそれぞれが進化していく可能性もあります♪

実は日本でも見られる野生のラッコ

霧多布岬 Photo by Azao Mart

ラッコは1900年代初頭までは北海道にも生息していました。しかし乱獲や環境変動によって日本からは姿を消しています。

事態が動いたのは約20年ほど前、北方四島へ生息域が戻ってきたためか、道東沿岸でラッコの発見例が相次ぐようになりました!

現在でも数頭は近海に定着しているとみられ、霧多布岬などでは繁殖も確認されています。

日本でラッコの目撃が相次いでいる「ラッコに会える」スポットをこちらの記事で紹介しています!

絶滅危惧種としてのラッコ

かわいらしい見た目から特に日本ではラッコブームが起き、全盛期には100頭以上が日本中の水族館で飼育されていました。

しかし今ではたったの5頭のみに。(2021年5月現在)

ラッコは毛皮目当ての乱獲が進み、アメリカを中心に個体群が次々減少。

さらにタンカー事故などで原油が流出すると、体毛が水を弾かなくなりたちまち凍え死んでしまいます。中には泳げなくなり溺死する個体も。

こうして次々に数を減らしてしまったラッコを保護するために、ワシントン条約によって輸出が厳しく制限されています。

日本にいるラッコはみんな高齢。子孫を残すことができず、どんどん飼育数が減ってしまったのです。

絶滅の危機に瀕しているラッコですが、日本でも再び姿を見ることができるようになったのは明るいニュースですね!

これからも元気な姿を見せてほしいものですね。