寿命を決めるテロメアの仕組みをわかりやすく解説!どんなに美容や健康に気を使っていても人間は老化してしまう理由とは
- 2020.05.16
- inspection nature science 化学 高校化学
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「テロメア」は人間の寿命を決定している非常に重要な概念で,その正体は染色体の末端部のことです。
本記事ではテロメアがどのような仕組みで機能しているのかをわかりやすくイラストをまじえて解説します。
テロメアを理解することは寿命を理解することにもつながります。私たちの寿命の仕組みを紐解いていきましょう!
テロメアの役割
テロメアは染色体の末端部を保護する役割を持っています。
染色体とはすなわち私たちの大事な遺伝情報であるDNAのことです。
テロメアは体中の全細胞に含まれる私たちの遺伝情報が細胞分裂の際に壊れないように守ってくれているのです。
テロメアの構造と仕組み
DNAは最も根本的な“個人情報”

染色体は通常核の中で折りたたまれて存在しています。
しかし細胞分裂の時にはまっすぐ伸びて私たちが想像するDNAの通り長大な二本鎖に伸びます。
DNA配列の正体は4種類の塩基です。コンピューターが0と1の2進法のよって情報を伝達しますが,それと似ていて4進法と考えればわかりやすいでしょう。
どのような塩基配列を持っているかで,体のパーツごとに個人が形成されていくのです。
テロメアの仕組みを理解すればすべてが見えてくる。

DNAは長い2本の紐というイメージは持っていただけたと思います。
裁縫などをするとよくあることだと思いますが,糸の先端ってほつれやすいですよね?
DNAも同じで,ただの2本鎖では先端が傷つきやすいです。その先端を守っているのがテロメアなのです。
DNAの先端には「AGGGTT」という配列が大量に繰り返された領域があります。
この配列が「ここが先端だよ」ということをアピールしている部分になります。本のしおりのようなものですね。
DNAには方向性がある
DNAには方向性というものがあります。DNAをコピーする際に決まった方向にしかコピーしたDNAを伸ばすことができないのです。
例えば私たちが文章の写経をするとき,文の初めから写すことはできても,文末から逆向きに文字を写していく作業はかなり大変ですよね。このようなイメージです。
DNAは2本鎖ということですが,それぞれの鎖の両端は「3末端」と「5末端」と呼ばれています。
そして3末端にはもう一方の鎖の5末端が対応してくっつくようになっています。2本の矢を向きを逆にして並べたようなイメージですね。
どんどん短くなっていくテロメア
DNAをコピーする際にはまず「プライマー」と呼ばれる先導役の塩基配列がくっつきます。そしてそこから5末端→3末端の向きで塩基が増えていくのです。
そして伸びていった塩基が次のプライマーの部分まで到達すると,プライマーをどかして,伸び切って長い鎖になっていくのです。

勘のいい方はお気づきかもしれませんが,1番最初のプライマーだけ,補うことができないのです。

DNAの先端を守っているのがテロメアだという話をしましたが,まさにこの短くなっている部分がテロメアです。
細胞分裂のたびに少しずつテロメアが短くなっていくのです!
テロメアが「命の回数券」と呼ばれる理由
日経電子版の記事で“「命の回数券」テロメアを守れ カギ握るは運動や睡眠”というものがあります。
この表現はまさにその通りで,少しずつテロメアが短くなっていった結果必要最低限の長さまで短くなると二度とコピーができなくなります。
コピーができなければ細胞分裂もできなくなってしまいます。いわゆる“細胞老化”という現象です。
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細胞老化について
細胞老化するとどうなるの?
現在のところ細胞の老化と人体の老化の直接的なつながりはあまりよくわかっていません。
細胞が老化して,細胞分裂ができなくなると即座に人間が死んでしまうというわけではありません。
しかし,年を取ると肌がしわしわになったり足腰が弱くなったりしますよね?
他にもたくさん理由はありますが,皮膚や骨の細胞の老化がこのような現象を引き起こしているという説はとても濃厚です。
スキンケア商品の限界
実際に“スキンケア”用として販売されている美容用品は,肌の細胞をなるべく若く保とうとする作用のものもかなりあります。
細胞に対するストレスを減らすことで,皮膚細胞のダメージを軽減すれば肌を若く保つことができるというのは理にかなっていると思います。
しかしいくら美容に気を使っていても細胞分裂が進めばいつかは細胞の死が訪れます。
100歳のおばあちゃんが肌すべすべということはいくら美容に気を付けていても考えにくいですよね。
おそらく細胞分裂の回数に限界があることと,このような見た目の老化には深い関係があることでしょう。
どうしてテロメアは必要なの?
ここまで読んで,テロメアさえなければDNAが傷つく心配はあっても細胞分裂し続けることができるんじゃないの?と思われたかもしれません。
しかし私たち人類は,進化するうえで“寿命”が必要だったのです。
寿命があるおかげで,私たちは子孫を残し,人口の数だけ異なる個体がいるという多様性を得ています。
地球上の環境が大きな変動に見舞われても,誰かが適応して生き残ってくれれば種は存続するのです。
寿命を決めているのはテロメアだけではありませんが,とても意味をもった重要な機構だったのです。

まとめ
私たちは寿命とは切っても切り離せない関係にあります。どんなに美容や健康に気を使っていてもいつかは老化します。
だからといってなにもせず自堕落な生活を送っていいというわけではありません。
暴飲暴食などの悪い生活習慣は体にストレスをかけるだけでなく,細胞にもストレスをかけています。
細胞はストレスによって死んでしまったりがん化することもあります。適度に健康に気を付けることが寿命を長く保つ秘訣かもしれませんね。
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