自己酸化還元反応はなぜ起こる?具体例6つで詳しくわかりやすく解説!【高校化学】

自己酸化還元反応ってどんな反応?
自己酸化還元反応とは「ある同一の物質が酸化剤にも還元剤にもなりうる」という反応です。
まずは通常の酸化還元反応の例を見てみましょう。
2H2S+O2→2H2O+2S
(-2)(0) (-2) (0)
硫黄(S)の酸化数は(-2)から(0)へと増えています。従って硫化水素が酸化されています。
酸素(O)の酸化数は(0)から(-2)へと減っています。従って酸素が還元されています。
そもそも「酸化」という現象は文字通り酸素と化合する反応ですので,上の反応式ではその通りになっていますよね。
次に自己酸化還元反応の例として過酸化水素水を見てみましょう。
2H2O2→2H2O+O2
(-1) (-2)(0)
過酸化水素に含まれている酸素の酸化数は(-1)でした。それが反応後には(0),(-2)の二種類の酸素に分かれています。
つまり過酸化水素は酸化と還元を同時に受けているということになります。
これが自己酸化還元反応の正体です。
自己酸化還元反応の例
過酸化水素(H2O2)
2H2O2→2H2O+O2
※この反応には触媒(通常は酸化マンガンMnO2)が必要です。
過酸化水素が触媒化で反応し,水と酸素が発生します。この反応は酸素の製法として有名です。
酸化数は以下のように変化しています。
2H2O2→2H2O+O2
(-1) (-2)(0)
もともと酸素は(-2)か(0)の酸化数がほとんどですので,過酸化水素だけ例外と考えておけばよいでしょう。
塩素(Cl2)+水酸化カルシウム(Ca(OH)2)
Cl2+Ca(OH)2→CaCl(ClO)・H2O
CaCl(ClO)・H2Oはかなり複雑な化学式ですが「さらし粉」と呼ばれるものの正体がこれです。
正式名称は「次亜塩素酸カルシウム」で殺菌剤でおなじみの人も多いかもしれません。また漂白にも用いられます。
酸化数は以下のように変化しています。
Cl2+Ca(OH)2→CaCl(ClO)・H2O
(0) (-1)(+1)
塩素(Cl2)+水
Cl2+H2O→HCl+HClO
水に塩素を溶かすと化学平衡により次亜塩素酸を生成します。
次亜塩素酸もさらし粉と同様で殺菌・漂白作用を示しますが,通常やや不安定です。
酸化数は以下のように変化しています。
Cl2+H2O→HCl+HClO
(0) (-1) (+1)
塩素酸カリウム(KClO3)
2KClO3→2KCl+3O2
※この反応には触媒(通常は酸化マンガンMnO2)および加熱が必要です。
こちらも酸素の製法として知られています。
酸化数は以下のように変化しています。
2KClO3→2KCl+3O2
(+5)(-2) (-1) (0)
こちらは同じ元素ではなく酸素と塩素がそれぞれ酸化還元されています。
亜硝酸アンモニウム(NH4NO2)
NH4NO2→2H2O+N2
こちらは窒素の製法として知られています。
といっても空気中には大量に窒素がありますから,工業的には空気を分留することで窒素を得ています。
この反応はあくまで実験室用ですね。
酸化数は以下のように変化しています。
NH4NO2→2H2O+N2
(-3) (+3) (0)
二酸化窒素(NO2)+水 ☜オストワルト法
3NO2+H2O→2HNO3+NO
硝酸の製法であるオストワルト法の最終段階にあたる方法です。
酸化数は以下のように変化します。
3NO2+H2O→2HNO3+NO
(+4) (+5) (+2)
塩素の自己酸化還元反応について
比較的安定な塩素と水が反応して,不安定な次亜塩素酸が生成することに違和感を覚えた方も多いかもしれません。
反応経路は以下のようなものと推測されています。

塩素原子の片方を水が引き寄せることで,塩素原子にδ+が生じます。そこでプロトンが脱離しながら水の酸素が塩素と結合することで反応が進行しています。
また先ほどもちょろっと述べましたが,この反応は平衡反応です。逆向きの矢印も成り立ちますし,通常ならばすぐに戻ってしまいます。
しかし反応後をみると強酸の塩酸が生成しています。
従って,この反応はアルカリ性条件下では比較的進行しやすいです。
生成した塩酸が中和することで次亜塩素酸が残る仕組みなのですね。
まとめ
自己酸化還元反応は一見すると不思議な反応ですが,丁寧に酸化数をふることで全体像が見えてきます。
反応後または反応前に同じ元素を複数含む場合には自己酸化還元反応を疑ってみるといいかもしれません。
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